46simposium

日本インドネシア学会第46回研究大会プログラム

第46回日本インドネシア学会大会プログラム

日時:2015年11月14日・15日開催

場所:京都外国語専門学校 1号館3階教室

住所 京都市左京区岡崎徳成町5番地  電話075-752-2300

URL  http://kccfl.kufs.ac.jp/

大会プログラム

第1日目 20151114日(土曜日)

12:00  1日目受付開始

12:15  開会挨拶

12:15  ― 12:50              自由研究発表  1

山口真佐夫 (YAMAGUCHI  Masao)   (摂南大学)

「マカッサル語、ブギス語再考」

12:50    ― 13:25           自由研究発表  2

原真由子  (HARA  Mayuko)         (大阪大学)

「バリ語インドネシア語コード混在会話におけるバリ語のparticleが果たす機能」

13:25 ― 14:00             自由研究発表  3

Petrus Ari Santoso (ペトルス・アリ・サントソ)  (慶應義塾大学)

Pembelajaran aktif dalam kegiatan membaca (Active learning in reading activity)

14:00 ― 14:15              休憩

14:15  ― 14:50              自由研究発表 4

長南一豪、アリ・アルタディ (CHONAN  Kazuhide,  Ari Artadi) (ダルマプルサダ大学)

「インドネシアの大学の日本語学科における言語学科目指導法の開発と実践」

14:50  ― 15:25              自由研究発表 5

三宅良美  (MIYAKE  Yoshimi)   (秋田大学)

「インドネシア異文化体験ジョークのメタ・プラグマティクス(Meta-pragmatics of Indonesian jokes: when Indonesia meets West)

15:25  ―  16:00              ゲスト・スピーカー

John Bowden  (東京外国語大AA研フェロー)

“ Toward a history of Indonesian slang “

16:00 ― 16:10              休憩

16:10 ― 17:00              総会(会員のみ)

18:00  ―  20:00 懇親会(会員以外の方も参加可能です)

場所:「がんこ 和食・三条本店」

〒604-8004 京都府京都市中京区三条通河原町東入ル中島町101

電話番号             075-255-1128

一般会費:6,000円/ 学生会費 4,000円

第2日目 20151115日(日曜日)

9:00    2日目受付開始

9:20  ―  9:55               自由研究発表  1

織田康孝 ( ODA  Yasutaka)  (立命館大学大学院文学研究科)

「日本軍政下のジャワ島における朝日新聞社の役割」

9:55  ― 10:30              自由研究発表  2

Ariestyani Wahyu Perwita Sari (アリエスティアニ・ワハユ・ペルウィタ・サリ)(学習院大学大学院人文科学研究科)

「インドネシア語における『連結動詞』をめぐって」

10:30  ― 10:50              休憩

10:50  ― 11:25              自由研究発表  3

Tiwuk Ikhtiari (ティウク・イヒティアリ) (京都大学大学院人間・環境学研究科)

「インドネシア語におけるリンカー yang” について」

11:25  ― 12:00              自由研究発表  4

稲垣和也  (INAGAKI  Kazuya)   (京都大学)

「インドネシア語の所有構文」

12 : 00  閉会挨拶

46abstract

第46回日本インドネシア学会大会発表要旨集

2015年11月14日

1 山口真佐夫 (YAMAGUCHI Masao) (摂南大学)

「マカッサル語、ブギス語再考」

Pertimbangan Kembali Bahasa Bugis dan Makassar

南スラウェシ語群に属するマカッサル語、ブギス語はオーストロネシア語群、マライ・ポリネシア語派、南スラウェシ語群に属する言語である。しかし現在、マカッサルはベントン、海岸コンジョ、高地コンジョ、マカッサル、スラヤルを含むグループの名称として、ブギスはブギス、チャンパラギアン、エンボラ、タマンを含むグループの名称としても用いられている。本研究は比較言語学に基づきブギス語、マカッサル語をどのように捉えるかを考察するものである。

 

2 原真由子  (HARA Mayuko)  (大阪大学)

「バリ語インドネシア語コード混在会話におけるバリ語のparticleが果たす機能」

Fungsi unsur particle bahasa Bali dalam percakapan campur-kode antara bahasa Bali dan bahasa Indonesia

バリ語とインドネシア語の二言語話者による、インドネシア語要素がより優勢である二言語のコード混在が認められる会話では、文の基本構成要素がインドネシア語で、文構成要素外のparticleがバリ語である例が多数見られる。本発表では、particleの要素がバリ語として現れることが、会話においてどのような機能・効果をもつのかを議論する。

 

3 Petrus Ari Santoso (ペトルス・アリ・サントソ)(慶應義塾大学)

Pembelajaran aktif dalam kegiatan membaca (Active learning in reading activity)

Banyak kali kegiatan membaca di kelas menjadi suatu pembelajaran yang pasif dimana pembelajar hanya membaca dan menjawab pertanyaan bacaan. Sebetulnya membaca adalah salah satu kegiatan yang dapat memberi pembelajar banyak manfaat dalam belajar dan berlatih Bahasa Indonesia. Di presentasi ini, saya akan berbagi beberapa aktivitas kelas dalam kegiatan membaca untuk tingkat dasar dan menengah. Aktivitas kelas tersebut melibatkan keterampilan bahasa lainnya di mana akan menjadikan pembelajaran aktif dan bermakna.

 

4 長南一豪、アリ・アルタディ (CHONAN Kazuhide, Ari Artadi)(ダルマプルサダ大学)

「インドネシアの大学の日本語学科における言語学科目指導法の開発と実践」

Perkembangan dan praktik pengajaran mata kuliah linguistik jurusan bahasa Jepang pada univesitas di Indonesia

大学の外国語学部の授業では、音韻論・形態論・統語論・意味論等の言語学科目が設置される。これらの科目は、たいてい非ネイティブ講師によって行われ、しかもその科目が専門ではないこともある。その結果、授業はすべて母語によって行われ、内容的にも生徒があまり興味を持てないものになってしまう。では、言語学を専門とするネイティブ講師が言語学科目を担当した場合、どのような指導が可能だろうか。本発表では、発表者が現在インドネシアの大学で行っている言語学科目の指導内容とその成果を報告する。

 

5 三宅良美  (MIYAKE Yoshimi) (秋田大学)

「インドネシア異文化体験ジョークのメタ・プラグマティクス

Meta-pragmatics of Indonesian jokes: when Indonesia meets West

インドネシアの伝統演劇、テレビのショーにおいては、道化やジョークのシーンが極めて重要な位置を占める。インドネシア人との日常的なやりとりもジョークで溢れている。本論は、影絵芝居やヴィデオのショーで観察される、異文化体験が発端となる笑いを分析しようとするものである。

今日のお笑いのシーンでは、しばし、西洋人が現れジョークの対象となる。データは、8月中旬に3日間続けられた中部ジャワ・フェスティバル(Festival Lima Gunung)の最後の出し物、Wayang Kulitの演目Dewa Ruci のゴロゴロのシーンにおいて繰り広げられた、アメリカ人pesindhen とdhalang とのやり取りと、Sasaに代表される、一連のインドネシア文化紹介ヴィデオである。ダランと西洋人、そして、それを笑う観客との間の関係、および、主に西洋人の聴衆を対象にし、「“インドネシア人・インドネシア文化”とは何か?」を、インドネシア人に扮し、語り、演じるカナダ人女性Sasaのナラティブを分析し、言語ストラテジーのパターンを探り、なぜこのようなジョークが可能となるのかを論じる。また、このようなパターンが、なぜ日本人、アジア人、非西洋人を巡るジョークにはないのかをも考察したい。

 

ゲスト・スピーカー

John Bowden (東京外国語大AA研フェロー)

Toward a history of Indonesian slang “

In this paper, I attempt to sketch out a short history of Indonesian slang. By its nature, slang is often ephemeral and it is usually confined to spoken genres of language. For these reasons it can be hard to find records of older slang. Slang is often confined to particular subgroups within a society, and it is no coincidence that some of the first dictionaries of, for example, English slang consisted of the language of criminals and sailors. Slang often involves the use of ‘ludlings’ or word games in which the sounds of a word a manipulated in some way or other. In the Indonesian context, the first widely recorded type of slang was a variety called prokem which was the slang of preman or gangsters in the 1970s. Prokem had many neologisms, but it also had a productive ludling involving the insertion of –ok- after the onset of the first syllable and the deletion of any subsequent syllables, thus the name of the language prokem is derived from preman. Another prokem ludling which has survived into modern Jakarta slang is bokap from bapak. During the 1990’s bahasa prokem was taken up by students and other middle class Indonesians, enriched with more vocabulary, and more or less turned into bahasa gaul which is a kind of slang used widey nowadays by young ‘hip’ Indonesians in the capital and elsewhere.

Apart from prokem, one of the best-known subcultural ludling styles is found in bencong or ‘transvestite’ slang. Like prokem, the word bencong itself is derived via a ludling from the word banci as is e.g. rempong from repot ‘troublesome’. These days it appears that slang in Indonesian gets richer and richer. Some slang is borrowed from English, e.g. cekidot from ‘check it out’, and much slang is formed from a productive process of making singkatan or abbreviations. These usually are formed by taking a syllable from one word and a syllable from another to create a new word, e.g. bacol < bahan coli ‘material masturbate’ or perhaps more colloquially in English as ‘wank fodder’ to describe someone deemed rather attractive. Singkatan can also be formed from a mixture of Indonesian and English words, e.g ja’im from ‘jaga image’ which means literally ‘to look after one’s image’ but also entails that any person who is ja’im is probably hiding something about their real personality from the rest of the world by presenting only one side of themselves.

Many commentators on contemporary language in letters to the editor and the like maintain that the existence of such slang is a threat to the existence of Bahasa yang baik dan benar which we might think of as ‘good and proper Indonesian’. In this paper, I will argue that on the contrary, the richness of Indonesian slang actually attests to the huge success of the Indonesian national language program: slang is partly defined by its opposition to official language, and such a rich slang as found in Indonesian can only exist when there is a rich standard to depart from.

 

2015年11月15日

1 織田康孝 ( ODA Yasutaka) (立命館大学大学院文学研究科)

「日本軍政下のジャワ島における朝日新聞社の役割」

Peranan “The Asahi Shimbun” di Pulau Jawa pada masa pendudukan Jepang

日本軍政初期のジャワ島においては、第16軍軍政部が軍政を担当し、宣伝班が住民対策の指導権を握っていた。しかし、両者は、異なる統治構想を有したことから、現地の住民運動や独立運動指導者などをも巻き込みつつ対立していく。こうした両者の対立が現出したのが現地語新聞Asia Rayaの主導権争いであった。

本研究は、この問題において朝日新聞社が果たした役割に注目することで、同事件が軍政下のメディアや独立運動に与えた影響を検討するものである。

 

2 Ariestyani Wahyu Perwita Sari (アリエスティアニ・ワハユ・ペルウィタ・サリ)

(学習院大学大学院人文科学研究科)

「インドネシア語における『連結動詞』をめぐって」

Kata Kerja Beruntun dalam Bahasa Indonesia

インドネシア語では、日本語のV-V型複合動詞のように、ある動詞が連用形となり、他の動詞と結合し一つの動詞を形成することはないが、二つの動詞が接続詞を使わず、形態的な変化がなく、動詞の原形のまま用いられ、連続して現れることがある。例えば、「ジョンはメアリを撃ち殺した」をインドネシア語に「John menembak mati Mary」に訳することができる。「menembak mati」のようなV-Vの形は、連結動詞と呼んでおく。

本稿の目的は、インドネシア語の連結動詞の振舞いを明らかにすることである。インドネシア語の連結動詞の使用実態を調べるために、インドネシア語の小説を用いて、連結動詞のデータを収集し、分析する。その結果、生産的であるものと生産的ではないものがあることが明らかになった。生産的ではないものはV1とV2の動作主が同じか否かの観点から分類を試みる。

 

3 Tiwuk Ikhtiari (ティウク・イヒティアリ)(京都大学大学院人間・環境学研究科)

「インドネシア語におけるリンカー yang について」

Meninjau Kembali Kata Perangkai “yang” dalam Bahasa Indonesia

リンカー “yang” は、名詞とその属性・付加語を結びつける機能を持っている。”Yang” の使用は選択的と言われているが、その使用 “sepatu yang baru”、または不使用 “sepatu baru” 「新しい靴」は、自由変異であるというわけではない。リンカーによって結ばれる名詞とその付加語の現象は他のオーストロネシア語族の言語にもあると考えられているが、それらに関しての仮説と “yang” のそれとの間には違いが存在する。本発表では リンカー “yang” の用法を整理し考察するつもりである。

 

4 稲垣和也  (INAGAKI Kazuya) (京都大学)

「インドネシア語の所有構文」

Possessive constructions in Indonesian

本発表の目的は、インドネシア語における所有をあらわす表現を概観し、特に ada、dari、dengan/tanpa による所有構文について詳述することである。ada による所有表現は、(i)所有権の非主張、(ii) 無生物所有者の分離可能所有を表現し得る唯一の叙述所有構文である。dari による連体所有構造は、その使用にいくつかの動機づけがある。また、dengan/tanpa による連体所有構造について、所有物の種類という点から記述を試みる。