作者別: bendahara

過去の研究大会

これまでの研究大会の記録

第47回研究大会 2016年11月19日・20日 愛知県立大学サテライトキャンパス WINCあいち

第46回研究大会 2015年11月14日・15日 京都外国語専門学校

第45回研究大会 2014年11月15日・16日 神田外語大学

第44回研究大会 2013年11月9日・10日 摂南大学寝屋川キャンパス

第43回研究大会 2012年11月17日・18日 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス

第42回研究大会 2011年11月12日・13日 京都産業大学

第41回研究大会 2010年11月13日・14日 拓殖大学 文京キャンパス

第40回研究大会 2009年11月28日・29日 京都外国語専門学校

第39回研究大会 2008年11月8日・9日  東京外国語大学 留学生日本語教育センターさくらホール

第38回研究大会 2007年11月10日・11日 南山学園研修センター

過去の研究発表・報告の題目

45abstract

日本インドネシア学会第45回研究大会(2014年)

Simposium Himpunan Pengkaji Indonesia Seluruh Jepang (HPISJ) ke-45 (Tahun 2014)

発表要旨集

Ringkasan Makalah

 

<自由研究発表 Presentasi Penelitian Bebas>

  1. 原真由子

    「バリ語山地方言における人称詞と呼称に見られる敬語表現」

(Bentuk hormat dialek bahasa Bali Aga dalam pronomina persona dan bentuk sapaan)

 バリ語には大きく平地方言と山地方言が認められる。バリ語平地方言には、敬語体系が見られ、カーストを中心とする身分関係に基づいた敬語使用が行われる。それに対して、バリ語山地方言地域にはカーストが見られず、出自による身分の違いはないため、平地方言に見られるような体系的な敬語はなく、ある一定の関係においてのみ、人称詞や呼称で敬意表現が見られるだけである。しかし、山地方言が話されている社会はカーストの差が見られないとはいえ、全くの平等社会ではなく、人称詞や呼称によって示される敬意表現はそこで重要な役割を果たしている。これまで、このような意味における山地方言における“敬語”とその背景となる社会構造や親族関係について報告はない。

本発表では、山地方言地域の1つであるプダワ村の事例に基づき、山地方言の敬意表現がどのように示され、それがどのような背景に基づいているのかを明らかにしたい。

 

  1. Edy Priyono

    “Sebuah Tinjauan atas Akronim & Singkatan dalam Pemilu 2014

(2014年の総選挙で使われた頭辞語と略語についての一分析)

2014年4月9日(水)に行われた総選挙のため、選挙管理委員会は新しい試みを行った。「Ayo Memilih!(さあ、選挙に行こう!)」と呼びかけるマスコットキャラクターを導入したのだ。Merah Putih(インドネシア国旗)をマントにしている白い箱のキャラクターの名前は“Si Kora” 。”Kora”はkotak suara(投票箱)の頭辞語である。

大統領選挙に立候補したPrabowoとJoko Widodo (Jokowi) の両陣営は副大統領候補と対で呼ばれた。”Pilihlah Prahara!(嵐を選びましょう!)”というキャンペーンをしたのはPrabowo陣営。”Prahara”は大統領候補のPrabowoの”Pra”と副大統領候補のHatta Rajasaの”Ha”と”Ra”でつくられた頭辞語である。一方Joko Widodo陣営は”JKW4P!”と呼びかけた。”JKW”はJokowiのことで、”4P”は”for Presiden”のこと。つまり、「Jokowiを大統領にしよう!」というキャンペーンである。ポスターでは”JKW4P”の後に”JK4WP(Jusuf Kalla for Wakil Presidenユスフ・カラを副大統領に!)”と続く。

選挙資金がゼロのJoko Widodoのため、”BARA JP(JPの熱く燃える火)”と呼ばれるボランティアの人々が活躍した。”BARA”はbarisan relawan の頭辞語、”JP”は”Jokowi for Presiden(ジョコウィを大統領に)の略である。

両陣営の逼迫した選挙が予想される中、選挙管理委員会は Si Kora に加えて ”BATAL GOLPUT!”というキャンペーンも行った。”GOLPUT”とはgolongan putih(棄権)の頭辞語で、「棄権をせずに投票に行こう!」と呼びかけたのだ。都市部の中流の人々に棄権する人が多いとされ、この人たちが投票に行くことが選挙の行方を左右すると考えられた。

大統領選挙の投票は7月9日(水)だったが、選挙結果の発表は7月22日。Joko Widodoの勝利が発表された。しかし、Prabowo陣営は裁判を要求。1か月後の8月21日に判決が出てやっとJoko Widodoの勝利が確定した。Joko Widodoを応援した弁護士のグループは”BAHU JP(JPの肩)”と呼ばれた。”BAHU”はbadan advokasi hukum(法的支援団体)の頭辞語、”JP”はJokowi Presiden(ジョコウィは大統領)の略である。

以上のように、インドネシアの選挙においては、新しい頭辞語や略語が氾濫し、選挙戦を加熱させた。本論文では、新しい頭辞語、略語の意味、背景、効果等について分析を試みる。

 

  1.  アリ・アルタディ、長南一豪

     「日本語とインドネシア語の終助詞について」

(Partikel Akhir Kalimat Bahasa Jepang dan Bahasa Indonesia)

日本語は「ね」「よ」などの終助詞が豊富である。インドネシア語にもya, lhoなどの終助詞が存在する。一見すると、「ね」「よ」はそれぞれya, lhoに対応するように思われるかもしれない。しかし、実は「ね」「よ」にはさまざまな用法があり、ya, lhoと訳すことのできるものはその一部にすぎない。「ね」「よ」の基本的な機能はそれぞれ「確認」「推論」であり、ya, lhoはそれぞれ「連帯」「気づかせ」であると考えられる。すなわち、日本語の終助詞は話し手中心であるが、インドネシア語の終助詞は聞き手中心であり、両言語は根本的に異なるタイプの言語であるといえる。

 

  1. 三宅良美

      “Reconsidering discourse particles in colloquial Indonesian”

(口語インドネシア語のタグ助詞について)

口語インドネシア語にはdeh, dong, kan, kek, kok, lho, sih,tha, ya, yah, yuk,といった数多くの助詞が観察される。この論考は、そのうち最も頻度が高く使われるものに入り、また文の最初や最後にも現れるlho, とkokについて論じる。

Atmosumarto 1994, Errington 1985, Sneddon 2006のような以前の研究は、これらの助詞にはさほど重要な意味論的な機能はないとし、スピーカーの強調や感情を強調するのに使われているとしか説明していない。しかしながら、kok とlhoのように一見同じ機能をもっている二つの助詞があるのなら、なぜそれが使い分けられるのかについての説明がない。さらにまた、kokのような助詞が文の先にくるのと後にくるのでは機能がかなり異なることも説明されていない。たとえば、(1)のkok1は、理由を問う疑問詞の機能を持つのに対しkok2は否定の助動詞を強調している。(2)のKok3 では、aja ‘だけ‘ を強調、(3)のkok4は、juga ‘~も’を繰り返している。

(1)          A: Kemarin, kok1    kamu      ga            datang?

yesterday kok          you          not          come

‘Why didn’t you come?’

Kamu        sakit,      ya?

you            sick,        yes

‘You were sick, yeah?’

B: Nggak   kok2

                   no            kok

                     ‘No.

(2)          A: Uang aku segini aja kok3

                money I like.this only kok

                ‘My money is only like this.’

(3)            A:   Dia   anggota Club Motor ya?

                          he    member club motor yes

‘He is a Motor Club member, yeah?’

 B:      Iya, aku juga kok4.

yes me also kok.’^

‘Yeah, me, too.’

 本研究のデータは、映画やソシアルネットワークのメッセージからきている。この助詞の機能を調べるとともに、助詞の意味論的研究の重要さを主張したいと思う。

Cf. Sneddon, James Neil 2006 Colloquial Jakartan Indonesian. Pacific Linguistics 581.

involvement. As explained in examples (18) and (19) of Chapter IV,

 

5  大形里美

「インドネシアにおけるイスラム新興ビジネスの動態」

(Dinamika Bisnis Baru Islam di Indonesia)

本報告では、近年インドネシアで活況を呈しているイスラム新興ビジネスを取り上げ、その動態を明らかにする。イスラム新興ビジネスの担い手たちの多くが、1980年代、90年代にイスラム教徒としてのアイデンティティーに目覚めたものたちではあるが、彼らは必ずしも厳格なイスラム教義解釈をする者たちとは限らない。彼らの商品・サービスは「イスラム的」であることが期待されるとともに、消費者の多様なニーズに応えることも期待されている。

 

6  荒木亮

「ジルブッブ(jilboobs)言説の広まりからみるイスラームのオブジェクト化」

(Exploring the objectification of Islam through the spreading discourse of “jilboobs”)

ムスリム女性(ムスリマ)が頭髪や顔を覆うスカーフ(布)は、広くインドネシアではジルバッブ(jilbab)という呼び名で親しまれている。けれども、近年、ジルバッブを着用した女性の服装について、とりわけ首から下の部分である上着やズボンの生地や着用のしかたについて、イスラーム的な視点から議論される対象となっている。

本発表では、「シルブッブ(jilboobs)」という典型的にはバストを強調するような服装をしているムスリマを批判する言葉の流行現象を手がかりに、都市部の若者にとってのイスラームについて、すなわちイスラーム復興現象の顕在化と欧米近代的なライフスタイルの浸透との狭間で希求される「イスラーム的なるもの」のあり方についての検討を試みる。

 

7   Sri Budi Lestari

   「佐賀県におけるハラール対応の実態調査」

(Survey terhadap Usaha Penyertifikasian Halal di Perfektur Saga)

2030年に世界人口の4人に1人がイスラム教徒になると予測されている.日本も近年イスラム教徒をターゲットとした巨大市場に注目し始めた.イスラム圏における商機に気づき,日本企業がハラール商品の輸出や製造に積極的に乗り出している.発表者が住んでいる佐賀県では有田焼の「ハラール磁器」認証取得を目指す取り組みや鯵を使ったハラール餃子の開発などの事例があり,地方においても海外のムスリム市場を狙う動きが盛んに見られる.

本発表は特に佐賀県のハラール市場を狙う取り組みの例(県や大手企業,中小企業など)を調べ,地方独特の取り組みに注目して詳細に報告する.さらに,佐賀県周辺在住のインドネシア人ムスリムを対象にハラールに関するアンケートおよび面接調査を行い,その結果を発表する.インドネシア人のムスリムが求めているハラールとは何か,彼らが実際に困っていることなどを,実態調査を通じて探る.ここ数年急速に脚光を浴びるようになったハラール市場ではあるが,主に外国から来る観光客がターゲットとされている中,国や地方自治体の取り組みと在日ムスリムのニーズとの間にギャップがあるかどうかや,具体的な課題が見えてくるのではないかと考える.

 

8  内海敦子

「北スラウェシ州の民話の分類」

(Klasifikasi Cerita Rakyat di Sulawesi Utara)

本発表では北スラウェシ州における民話について、おおまかにいくつかのタイプに分けて述べる。北スラウェシ州の民話は、現地の研究者が1970年代から1980年代にかけて採集した文献がある。また、子供向けの民話集も存在する。本発表では、これらに加え、発表者が独自に採集した民話テキストも考察対象とする。土地の由来を説くもの、幅広くアジアに分布しているもの、明らかにヨーロッパの影響が見られるものなどに分けて分析する。

 

9  山口裕子

「ブトン島チア・チア語へのハングル導入の社会、歴史的背景と行方」

(The Adoption of Hangul in Cia-Cia Language in Buton Island:

The Socio-Historical Background and the Future)

東南スラウェシ州ブトン島の一部の小学校では、2009年から韓国語のハングルを用いた地方語(チア・チア語)教育計画が実施されている。本発表では、言語学的な先行研究を概観した上で、この動向の歴史的社会的背景を、地方社会間の関係史、分権化が進む地方政治と地方語教育の現状、韓国における「ハングルの世界化」などの複数の視点から考察する。さらにグローバルな「危機言語の保存」というスキームに照らして計画の行方を展望する。